【論文掲載報告】汗から疲労度が分かる?ウェアラブルセンサーで血中乳酸をモニタリングする研究

2025年7月末、情報学部・情報工学科 スポーツ情報科学研究室の谷代一哉教授による論文が、国際誌 Open Access Journal of Sports Medicine に掲載されました。

情報学部・情報工学科 スポーツ情報科学研究室 谷代一哉教授

 この研究は、激しい運動をしたときに体の中でどうエネルギーが使われ、どのくらい疲れているかを「汗」を使って調べられるかを試したものです。通常は「血液中の乳酸」という成分を調べますが、そのためには採血が必要で痛みや手間があります。そこで研究チームは、体につけるセンサーで「汗の乳酸の量」と「汗の出る量」を測定し、血液中の乳酸の動きと比べました。

 実験では5人の大学生アスリートに短時間の激しい自転車運動をしてもらい、その後30分間、血液と汗を同時に測定しました。その結果、激しい運動後の血液乳酸の量を、採血せずに汗の乳酸と汗をかく速さから高い精度で予測できることがわかりました。

 この方法なら、採血をしなくても運動中の体の状態を簡単に知ることができる可能性があります。将来的には、スポーツの現場で練習効果を測ったり、一人ひとりに合ったトレーニングを考えたりするのに役立つと期待されています。

実験で使用したウェアラブルセンサー(右肩甲骨の上縁から内側に2cmの位置に装着)

【論文タイトル】

Short Report: Estimating Blood Lactate Dynamics from Sweat Lactate and Sweat Rate After High-Intensity Exercise – A Pilot Regression-Based Study

【研究概要】

 本研究は、ウェアラブルデバイスを用いて汗中の乳酸濃度および発汗量を測定し、高強度運動後における血中乳酸動態の推定を試みたものです。従来、運動時のエネルギー代謝や疲労評価の指標として血中乳酸濃度を測定する際には、採血を伴う侵襲的手法が必要とされてきました。

 本研究では、短時間の高強度運動実施後の被験者を対象に、汗中乳酸を経時的に測定し、血中乳酸動態との関係を解析しました。その結果、非侵襲的かつ簡便な方法で運動中のエネルギー代謝を推定できる可能性が示されました。

 さらに、乳酸は主に骨格筋において産生されることから、個人の筋特性や身体動態との関連性についても示唆が得られ、将来的にはスポーツ現場におけるトレーニング効果の評価や個別最適化への応用が期待されます。

【参考リンク】

論文は下記のリンクよりご覧いただけます。
(Open Access Journal of Sports Medicineのページが開きます)

https://doi.org/10.2147/OAJSM.S534243

スポーツ情報科学研究室
https://www.kait.jp/research/navi/yashiro.html


【この記事に関するお問い合わせ先】

 研究推進機構 研究広報部門
 E-mail:ken-koho@ccml.kanagawa-it.ac.jp