産学官連携メールマガジン(特集:管理栄養学科)

(●:新規、◎:更新、○:再掲)
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【1】研究・技術シーズ紹介(特集:管理栄養学科)
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●行動科学理論とナッジの概念に基づいたICTを活用した食育の展開
                      栄養教育研究室 教授 饗場直美
 COVID-19(コロナウィルス感染症)の世界的流行は、私たちの生活様式を変化させましたが、
様々な技術革新を起こしました。中でもITの技術の進歩は著しく、食育においてもICTを活用し
た展開が求められています。食品の選択から食事摂取までの食行動の変容を確実にするために、
多くの行動科学理論にICT技術を組み合わせ、カフェテリアでのナッジを活用した野菜摂取の
推進や、各地の栄養教諭と共同でICTを活用した給食時の食の指導を推進しています。また、
情報学部・福本研と共同でICTを活用した食育動画を制作し、東京動画で公開されています。
https://tokyodouga.jp/life/medical/health-center)。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/aiba.html

○給食生産工程における食品成分の組成・機能性の変化に関する研究
                  給食経営管理研究室 准教授 大澤絢子
 食品には健康の維持増進に役立つ様々な栄養成分や機能性成分が含有されています。これら
の中には酸や熱への耐性が弱い成分もありますが、そのような成分は、同じ食材を使用したと
しても、調理の条件や提供までの保管方法等の違いにより、体内摂取時の含有量が異なる場合
があります。学校などで提供される給食のように一度に数百食の食事を生産するときは、数食
分で調理するときと加熱条件や保管時間等が大きく異なりますが、これらの食品成分がどの程
度残存し、機能性を維持しているかについては解明されていないことも多くあります。そこで
当研究室では、給食を調理するときに食品成分の含有量や機能性がどのように変化するのかを、
分析化学の技術を使って明らかにする研究に取り組んでいます。実際に、調理の規模や保管時
間によって味や栄養成分量が大きく異なることも明らかとなっています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/osawa.html

○慢性腎臓病に対する低たんぱく食療法の効果と栄養状態に与える影響についての検討
                   実践臨床栄養学研究室 教授 菅野丈夫
 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)における低たんぱく食療法(low protein
diet:LPD)は、CKDの進行抑制とCKDにおけるさまざまな症状に対する治療手段とし
て広く行われており、日本腎臓学会の診療ガイドラインにおいてもその実行が推奨されていま
す。しかし、どの原疾患や病期に対して、どの程度のたんぱく質制限量が有効なのかなど不明
な点も多く、また、栄養状態に与える影響についてもよくわかっていません。当研究室ではこ
れらの不明な点を明らかにすべく、他の医療機関と共同し、LPDを実施しているCKD患者
を対象とした後ろ向き観察研究を中心とした研究を行っています。また、多施設共同にも参画
しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nutrition/academic/kanno.html

◎食品成分の持つ生活習慣病惹起を抑制する力の探索
                    栄養生化学研究室 教授 清瀬千佳子
 肥満が長期に続くと、脂肪細胞にマクロファージが浸潤する事で、炎症が誘導されると言わ
れており、この脂肪細胞からの炎症物質の放出が骨格筋や肝臓への影響を拡大し、糖尿病を始
めとする生活習慣病を惹起すると考えられています。本研究室では、マウス繊維芽細胞である
3T3-L1細胞とマウスマクロファージ細胞であるRAW264.7細胞との共培養系を用いたIn vitro実
験や肥満モデル動物を用いてのIn vivo実験を通して、食品成分の肥満・生活習慣病の改善効
果について検討を行っています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/kiyose.html

●天然無機材料を利用した食品の保存およびバイオフィルムの抑制に関する研究
                      食品衛生学研究室 教授 澤井 淳
 我々の身の回りの環境中には細菌、真菌及びウイルスなど様々な微生物が存在し、その中に
は人に重篤な感染症や食中毒を引き起こすものもあります。食中毒の発生状況は、衛生環境の
改善が進んでいるのにもかかわらず、殆ど変わっておりません。当研究室では、貝殻を原料と
した焼成貝殻カルシウムなどの天然無機系材料を用いた新たな食品の保存方法の開発に取り組
んでいます。焼成貝殻カルシウムは強い抗菌活性を示すだけでなく、食品添加物にも認められ
ています。食中毒や感染症の主たる原因であるバイオフィルムに対する殺菌手法や、天然無機
材料を利用したあらたな抗菌塗料の開発も行っております。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/sawai.html
https://sawai9.wixsite.com/jsawai-lab

●食事が精神活動や認知機能に及ぼす影響の検討
                臨床栄養・健康科学研究室 准教授 澤井明香
 生活習慣病や認知症などの予防や治療において、食事は重要な要素であり、食習慣を適切に
評価して、栄養管理に生かすことが求められています。しかし、日常生活で主な活動を占める
精神活動に関しては、例えば精神ストレスや人の顔の認知と食事との関わりについて等、未解
決の問題が多く存在します。本研究室では、欠食や食事の内容と、精神課題や認知課題の回答
時の脳血流、自律神経等の循環動態や、味覚、嗅覚、痛覚などの感覚機能の測定を通じて、さ
らにこれらを身体活動と比較することで、臨床の現場での栄養管理に役立てるための検討を行
っています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/sawaiasuka.html

〇調理の過程におけるおいしさの制御方法の確立
                    調理学研究室 准教授 野村知未
 国民健康・栄養調査(令和元年)によると、多くの年代で植物性食品に多く含まれるビタミ
ンB群、食物繊維等の摂取量が著しく不足しています。食物を口にしたときの食感は、おいし
さを左右する重要な因子の一つですが、植物性食品は調理方法によって食感だけでなく栄養
成分の変動も大きくなります。
 本研究室では、「自然に健康になれる持続可能な食環境づくり」の推進にむけて、調理の過
程において栄養成分の流亡を抑えた食感の制御方法を確立することを目的に研究に取り組んで
います。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nutrition/academic/nomura.html

●生活リズムの乱れが生殖器発達に及ぼす栄養学的研究
                    基礎栄養学研究室 教授 花井美保
 現在、コロナ禍により広まったリモートワーク等、働き方が多様化し、生活リズムが乱れや
すい環境にあります。生活リズムが不規則な女性は、不妊や流産する確率が高いこと、男性で
は、精子数が減少することが報告されています。生活リズムが24時間周期でない連続暗黒下
でラットを飼育すると、繁殖率が低下することも報告されています。本研究では、生活リズム
攪乱モデルラットをもちい、生殖器の発達や性ホルモンの分泌、体重及び主要臓器に及ぼす影
響を調べるとともに、その影響を緩和するタンパク質量および質について検討しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/hanai.html

◎住民主体の健康な地域づくり活動に関する研究
                   公衆栄養学研究室 准教授 原島恵美子
 健康寿命の延伸を実現するには、すべての世代における生活習慣病の予防とともに、社会生
活を営むための機能を高齢になっても可能な限り維持することが重要です。そのためには、高
齢者の心身機能の改善や環境づくりなどを通じて、個々の高齢者の生活機能や参加の向上をも
たらす働きかけが必要です。本研究室では、某団地自治会とのパートナーシップにより、食を
介した健康な地域づくり活動を展開しています。コロナ禍は、活動休止が続いていましたが、
徐々に再開していることから、新しい生活様式を踏まえた低栄養予防や防災対策を中心とした
持続可能な活動の構築に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/harashima.html

○健康長寿を支える食と身体活動に関する研究
                  応用栄養学研究室 准教授 三宅理江子
 健康に過ごすためには食事と身体活動(運動)のバランスが大切です。 1日にどのような
食事をどのくらい摂取するのか、またどのような身体活動をどの程度行うと健康に過ごすこと
ができるのかについて検討しています。本研究では、地域在住高齢者を対象に栄養状態と食品
摂取の多様性の関連について検討を行いました。本研究の対象者においては男女とも低栄養と
判定されるものはおらず、栄養状態良好なものが全体の80%以上を占めました。しかし、食品
を多く摂取していても“低栄養のおそれあり”のものがいたことから、摂取する食品数が多く
ても低栄養になる可能性があることが示唆されました。継続に支援を行うことで、生活習慣病
や介護を予防し、健康長寿に貢献することを目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/miyake.html

〇食事・運動・睡眠-生活習慣から病態発症の機序と新たな治療戦略に迫る
                  食品学・薬理学研究室 准教授 宮本理人
 いわゆる生活習慣病、という言葉のとおり、生活習慣は様々な疾患と関わっています。当研
究室では中枢と末梢の相互作用に注目し、食事、身体運動、概日性リズムなどの生活習慣の観
点から、糖尿病、脂質異常症、肥満症、ガン、神経変性疾患など、代謝疾患を中心とする様々
な疾患の発症メカニズムや病態生理を明らかにするとともに、主に実験動物や培養細胞などを
用いて、新しい機能性食品素材や薬物の探索、ならびに、その作用メカニズムの追求を行って
います。食品学、薬理学、生理学の各アプローチを融合し、生命科学と医療の進歩に貢献した
いと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nutrition/academic/miyamoto.html

〇多価不飽和脂肪酸由来生理活性物質と腎血管障害に関する研究
                病態栄養生化学研究室 教授 横山知永子
 近年、健康志向によりアラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン
酸(DHA)を含むサプリメントが流行っていますが、これらの多価不飽和脂肪酸からは、炎
症を惹起・増悪させる作用や、逆に炎症収束に働くなど様々な生理活性をもつ物質が産生され
ます。このうちアラキドン酸由来のプロスタサイクリンは血管系の恒常性維持に重要な働きを
担っており、これが欠損したマウスは、加齢に伴い慢性腎臓病様形態変化と動脈硬化を発症し
ます。本研究では培養細胞系や欠損マウス組織等を用いてその病態発症機構を明らかにし、腎
血管障害に対する新たな治療法や予防法(栄養・食事療法を含む)の開発につなげることを目
指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/nutrition/academic/yokoyama.html

●発育期の健康管理に求められるdigital transformation
                 成育栄養学研究室 特任教授  鮎澤 衛
 この数年、デジタル化による健康管理の概念が進み、健康診断、診療状況などのデータを、
自治体、行政の関連部門と医療機関とが連携し、国民が電子データとして保有・参照できるよ
うな体制が検討され始めています。当研究室においても、発育期にある就学年齢小児の身長、
体重、肥満度とともに、突然死予防を目的とした学校心臓検診の心電図情報やエックス線、血
清脂質や血糖値などの検査データからNCD(非感染性疾患)対策につながるデータの処理と情報
利用の研究活動に参画しています。さらに医療画像情報の数値化処理もAIの導入で始まってい
ますが、発育年齢における評価方法や費用対効果の問題など、今後検討を進めたい課題です。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nutrition/academic/ayusawa.html