産学官連携メールマガジン(研究・技術シーズ紹介 特集:応用バイオ学科)

(●:新規、◎:更新、○:再掲)
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【1】研究・技術シーズ紹介(特集:応用バイオ科学科)
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●腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する成分の発見
                     生物制御科学研究室 教授 飯田泰広
 多くのがん細胞では、アポトーシス機能が抑制されており、無制限な増殖や抗がん剤への耐性
の要因になることが知られています。私達は、様々ながん細胞で高発現しているSurvivinと
HBXIPが複合体を形成してアポトーシスを抑制していることに着目し、複合体の形成を容易に評
価するシステムを開発しました。その結合活性を指標にして生薬抽出物を対象に
Survivin-HBXIP複合体形成阻害物質を探索しました。また、複合体形成阻害能を有する抽出物を
がん細胞(悪性黒色腫、肺がん、膵がんの細胞)に作用させることでそれらのがん細胞にアポト
ーシスを誘導することを見出しました。これらの成分の中に、新たな抗腫瘍活性物質が含まれて
いると期待しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/iida.html
http://iida.biokait.jp/iida/welcome.html

◎膜ろ過法を利用したナノマテリアルの分離精製技術の開発
膜分離工学研究室 教授 市村重俊
均一なナノサイズの物質を高濃度で効率良く回収する分離精製操作は一般に煩雑なものとなりま
す。膜ろ過法は、これを容易に連続的に行えるため期待されていますが、物質の吸着や堆積によ
り性能が低下するファウリング現象への対策が不可欠です。そこで当研究室では、ナノマテリア
ルと膜との相互作用を膜の表面修飾により制御することで、高い耐ファウリング性を持つろ過膜
を開発しています。また、膜の性能を最大限発揮するためには堆積抑制技術も必要となるため、
分散凝集挙動も含めた現象の解明、ろ過条件の最適化手法についてもあわせて検討しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/ichimura.html
http://ichi.biokait.jp/ichi/Welcome.html

〇線虫C. elegansおよび哺乳動物培養細胞を用いた健康寿命延長に寄与する生理活性物質の探索
と同定および機能解析
                  老化・疾患生物学研究室 准教授 井上英樹
 植物や食材に含まれる生物由来の生理活性物質が生物の健康状態の向上に寄与することが知ら
れています。当研究室では遺伝子および細胞内機構がヒトと共通している線虫C. elegans(ガン
を匂いで探索すると話題になった生物です)および、哺乳動物培養細胞を用いて健康に寄与する
生理活性物質を探索、単離・同定し、その作用機序の解明を進めています。最近は特に、皮膚の
老化を抑えたり傷の修復を促進する作用を持つ生理活性物質や、がんの転移や悪性化を抑えるこ
とが期待される生理活性物質の作用機序の解明に焦点を合わせ研究を進めており、健康長寿を実
現するための基礎となる知見確立を目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/inoue.html
http://inoue.biokait.jp/index.html

○組織培養による薬用植物の大量増殖技術の開発
                      植物細胞工学研究室 教授 岩本 嗣
 漢方薬に対する関心の高まりとともに、漢方薬の市場規模は拡大傾向にありますが、日本での
生産量は少なく、海外からの輸入に依存しているため、安定供給に対する懸念が大きいです。ま
た、類似品や有効成分含量が少ない粗悪品の混入が問題となっているため、成分含量の揃った漢
方薬の安定供給が急務となっています。そこで、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
の依頼を受け、漢方薬の材料となる薬用植物の無菌培養系の確立と組織培養による大量増殖技術
の開発に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/iwamoto.html

〇タンパク質から見た食品の研究
                       水産化学研究室 准教授 小澤秀夫
 食物アレルゲンの原因物質は、食品中に含まれるタンパク質です。特定原材料に指定されてい
るエビのアレルゲン除去法を開発しました。分子動力学シミュレーションは、蛋白質構造データ
バンクに登録されていますタンパク質およびそれらの近縁タンパク質を対象にタンパク質のふる
まいを計算機により再現する手法です。 現在は、魚肉の赤色を担うミオグロビンを対象とし、
その変色機構の分子機構を検討しています。 
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/ozawa.html
http://ozawa.biokait.jp/

○腸の粘膜防御能に及ぼす食物繊維の影響
                       免疫化学研究室 教授 栗原 誠
 食物繊維は、腸粘膜に物理的な刺激を与えて腸の運動を促す他、腸内細菌のエサとして腸内
細菌叢(腸内フローラ)の維持に寄与していますが、腸内細菌のエサになる食物繊維は一様で
はないため、食物繊維の種類によって腸内フローラのタイプが異なる場合があります。一方、
食物繊維の宿主腸粘膜に与える影響については、粘膜防御能を高める作用等が示唆されている
ものの、「食物繊維の種類や腸内フローラのタイプによってその作用は異なるのか?」など、
不明な点が多くあります。本研究では、腸粘膜防御の最前線で働く粘液物質に着目し、食物繊
維が粘液物質の「質」や「量」に及ぼす影響を、独自に開発したモノクローナル抗体を用いて
検討しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/kurihara.html

○シャペロニン複合体を用いた薬物送達システム(DDS)用ナノカプセルの研究
                   分子機能科学研究室 教授 小池あゆみ
 シャペロニンは、生体内で変性タンパク質が凝集しないようその空洞内(直径4~8nm程度)
にこれらを閉じ込め、一定時間後に放出する機能を持つタンパク質です。本研究では、その生
体適合性・均一サイズ・開閉能力などを利用して、DDSに応用するための研究に取り組んで
います。ATP加水分解活性低下型GroEL変異体と核移行シグナルペプチドが付加された
GroES 活性を有するサブユニットから成るシャペロニン複合体を合成し、この複合体が
これまで困難だとされていた細胞内の細胞核に局所的に送達可能であることを見出しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/koike.html
http://koike.biokait.jp/koike/Welcome.html

◎高分子界面科学の技術を利用したナノカプセルの開発
                    食品高分子化学研究室 教授 清水秀信
 食品・医薬品・化粧品などの分野に、生理活性や抗酸化性などの機能を有する分子を活用し
ていくためには、実際に使用される環境下において、これらの分子が機能発現できるためのカ
プセル化技術が必要とされています。われわれの研究グループでは、ナノサイズの高分子微粒
子内にこれらの機能性分子を分子分散させる技術を構築しました。現在までのところ、タンパ
ク質や水に溶けにくい機能性成分などを20wt%以上の高濃度でカプセル化できる手法として、
ミニエマルション法やin situ重合法が有効であることを見出しています。これらの手法はいず
れも、溶解または分散しているカプセル化分子存在下で重合を行うことにより、簡便にナノカ
プセルが得られることが特徴です。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/shimizu.html
http://shimizu.biokait.jp/

○非可食性バイオマス資源からのイソプレンの生産
                    微生物工学研究室 准教授 仲亀誠司
 非可食性バイオマス資源とは、光合成により炭素固定ができる食べられない動植物のことで
あり、例えば、木材や草が該当します。非可食性バイオマス資源は、化石燃料と比べて、CO2
排出量が少ない輸送用燃料や化成品原料の製造(バイオリファイナリー)のプロセスの構築が
可能であるため、CO2排出量の削減を目的とした非可食性バイオマスからの有用物質の生産が
広く研究されています。当研究室では非可食性バイオマスから合成ゴムの原料であるイソプ
レンの製造を目的として、非可食性バイオマスの分解能の高い担子菌(キノコ)にイソプレ
ン合成遺伝子を導入した形質転換体の作製とその利用を行っています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/nakagame.html

○ピペリジン骨格を有する化合物の合成研究と生物活性物質の探索を目指したピペリジンライ
ブラリーの構築
                   天然有機化合物研究室 教授 野田 毅
 ピペリジン環は、医薬品の中で最も多く見いだされるヘテロ環の1つである。この構造をも
つ化合物は生物活性を持つ天然物に見いだされるだけでなく、医薬品へと展開できる可能性が
高くその合成研究は盛んです。しかし、2位に置換基を持つ3-アミノピペリジン誘導体の合
成例は少ない。本研究では、3-アミノピペリジンを部分構造として有する光学活性2
-置換-3-
アミノピペリジンの合成法を開発し、この合成法を利用してピペリジン化合物ライブラリーを
構築するとともに、これらのライブラリーの中から医薬品の候補化合物やその中間体、生命現
象の解明に役立つ新規化合物の探索に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/noda.html

○新しく作られた蛍光タンパク質の最適化
                   時空間細胞生物学研究室 教授 村田 隆
 下村脩博士のノーベル賞に象徴されるように、緑色蛍光タンパク質(GFP)を用いた細胞
標識技術は現代の生物学の重要技術の一つであり、現在でも波長、明るさ、光安定性などの改
良が続いています。しかし、改良された蛍光タンパク質を実際の研究に使うためには、蛍光タ
ンパク質遺伝子を標識したいタンパク質の遺伝子につなぎ、生きている細胞に導入して評価し、
接続の最適化を行わなくてはなりません。我々は細胞分裂に必須なチューブリン遺伝子や、
細胞の増殖に必要な他の遺伝子を用いて最適化を行っています。蛍光タンパク質とチューブリ
ン等の間をつなぐリンカー配列の最適化の結果、染色体、動原体、紡錘体などを多重標識して
長時間3Dライブイメージングすることに成功しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/murata.html
https://sites.google.com/view/kait-muratalab/

◎軸索輸送による神経細胞の恒常性制御とその神経変性疾患への関与
                     神経生物学研究室 准教授 山下直也
 私たちが物事を感じ、考え、覚えたりできるのは、脳の中に850億個もの神経細胞がいるから
です。神経細胞の殆どは生まれる前に作られ、一度作られた神経細胞は再生できません。従っ
て、生涯にわたり神経細胞を正常に維持し続けることは、健康寿命の延伸に繋がります。当研
究室では、軸索輸送と呼ばれる脳内の宅配システムに着目し、軸索輸送が正確に働くことで健
康な神経細胞が維持される機構と、宅配システムの異常が神経疾患発症と関連することについ
て研究しています。既にアルツハイマー病(AD)関連分子の軸索輸送において新しい知見を
見出し、これを基にしたADの診断、予防、治療に向けた応用研究にも取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/yamashita.html

○酵素法による食品中に含まれるヒスタミンの高感度測定法の研究
                       酵素工学研究室 准教授 山村 晃
 ヒスタミンは主に魚介類の腐敗が生じる過程で生成され、その摂取によりアレルギー性食中
毒を引き起こすことがあります。このため食品中のヒスタミン濃度の測定は品質管理上重要と
され、ヨーロッパなど海外ではヒスタミンの基準値が設定されています。本研究室では、ヒス
タミンオキシターゼを産生する菌を土壌から発見し、その酵素遺伝子の増幅及び大腸菌に形質
転換した高発現系の構築に成功しており、現在、熱的に安定で長期保存が可能なヒスタミンオ
キシターゼの産生に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/yamamura.html

○細胞の力の測定と種間比較を通して生物の形作りの仕組みに迫る
                       細胞力学研究室 助教 山本一徳
 生体組織中で、細胞は絶えず機械的な力にさらされており、力が発生や恒常性の維持におい
て重要な役割を担うことが近年明らかとなってきました。細胞の力学的な変化は、細胞の生理
的な変化を表しており、病気の進行の良い指標にもなります。本研究室では、生物の形作りの
仕組みを力学的な観点から種間比較する研究を行っています。胚発生中に働いている細胞スケ
ールの力を測定し、力を生み出す分子のイメージングに取り組む。分子と細胞の間を繋ぐこと
で、生物における形作りの仕組みの種間の違いと共通性を明らかにし、秩序立った生物の形を
規定している力学法則を発見することを目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/yamamoto.html
https://sites.google.com/view/kait-cellmech

○リン酸を吸着する高分子材料の開発
                 環境高分子化学研究室 准教授 和田理征
 リンは、あらゆる生物にとって必要不可欠であり、また、化学肥料、農薬、殺虫剤などに使
用されている重要な元素の一つです。しかしながら、日本はリンの消費大国であるにもかかわ
らず、必要なリンの全量を輸入に頼っています。さらに,排水中にはリンとして5.5万トン
が流入しているといわれています。排水中のリンを回収できると、富栄養化によって起こる赤
潮やアオコなどの発生を抑制できます。 リン除去法として、リン酸マグネシウムアンモニウ
ム(MAP)法やハイドロキシアパタイト(HAP)法などの晶析法が開発されていますが,
いずれもpHを調製する必要があります。そこで本研究では,一般的な廃水処理施設より排出
されるT-P 5mg/Lのリン濃度をT-P 1mg/L以下までより簡便に低減し、さらにリンを資
源として回収できる材料の開発に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/wada.html
http://wada.biokait.jp/