【KAIT産学官連携メルマガ】応用バイオ科学科特集(2024年2月16日号)

※本メールマガジンは、神奈川工科大学(KAIT)が主催するシンポジウム等に参加された方、展示会等で名刺交換させていただいた方、関係機関の方々に配信しております。
※配信先の変更・停止をご希望の方は、末尾をご参照ください。

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 目次
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【1】新着ニュース
【2】KAIT機構チャンネル
 ●地球温暖化を抑制するためのバイオマス資源からのプラスチック原料の生産
 ●バーチャルリアリティーを利用したタンパク質の見える化と直感的創薬デザイン
 ●分子機能科学研究室
【3】研究・技術シーズ紹介(応用バイオ科学科)
 ●腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する成分の発見
 ●膜ろ過法を利用したナノマテリアルの分離精製技術の開発
 ●線虫C. elegansおよび哺乳動物培養細胞を用いた健康寿命延長に寄与する
  生理活性物質の探索と同定および機能解析
 ●組織培養による薬用植物の大量増殖技術の開発
 ●タンパク質から見た食品の研究
 ●腸の粘膜防御能に及ぼす食物繊維の影響
 ●酵素の反応機構を利用したタンパク質性カプセルの開発
 ●海産無脊椎動物の生殖や発生の研究
 ●高分子界面科学の技術を利用したナノカプセルの開発
 ●非可食性バイオマス資源からのイソプレンの生産
 ●ピペリジン骨格を有する化合物の合成研究と生物活性物質の探索を目指した
  ピペリジンライブラリーの構築
 ●新しく作られた蛍光タンパク質の最適化
 ●軸索輸送による神経細胞の恒常性制御とその神経変性疾患への関与
 ●酵素法による食品中に含まれるヒスタミンの高感度測定法の研究
 ●抗菌性高分子ゲル材料に関する研究

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【1】新着ニュース
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■先進自動車研究所・井上秀雄教授の記事がWEBメディア「Motor Fan illustrated」に掲載されました
https://www.kait.jp/news/post_79.html

■「見守りロボット」と「無価作業支援ロボット」の開発で現代日本の困りごと解決を目指す!
https://www.kait.jp/tech_news/post_6.html

■先進eスポーツ研究センターの取り組み
 ―FPS競技者のレベルを特定したり、大手メーカーのヘッドホン開発に貢献したりしています―
https://www.kait.jp/tech_news/post_5.html

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【2】YouTube「神奈川工科大学 研究推進機構チャンネル」
https://www.youtube.com/@KikouKAIT

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今号では、応用バイオ科学科関係の動画を3点ご紹介します。

仲亀誠司教授が研究を進める先進的技術「地球温暖化を抑制するためのバイオマス資源からのプラスチック原料の生産」についてご紹介しています。
※第1回リサーチデー(2023年3月31日開催)でのオープンラボ紹介動画です。
https://youtu.be/WASRZQbY5uA

小池あゆみ教授と高村岳樹教授(応用化学科)が開発を進め、学生の研究でも利用している「バーチャルリアリティーを利用したタンパク質の見える化と直感的創薬デザイン」についてご紹介しています。
※第1回リサーチデー(2023年3月31日開催)でのオープンラボ紹介動画です。
https://youtu.be/kc7WJ4ztuak

小池あゆみ教授の「分子機能科学研究室」の研究内容ついてご紹介しています。
https://youtu.be/cE3mycKvSWE

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【3】研究・技術シーズ紹介
  《特集》応用バイオ科学科 
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●腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する成分の発見
生物制御科学研究室 教授 飯田泰広

多くのがん細胞では、アポトーシス機能が抑制されており、無制限な増殖や抗がん剤への耐性の要因になることが知られています。私達は、様々ながん細胞で高発現しているSurvivinとHBXIPが複合体を形成してアポトーシスを抑制していることに着目し、複合体の形成を容易に評価するシステムを開発しました。その結合活性を指標にして生薬抽出物を対象にSurvivin-HBXIP複合体形成阻害物質を探索しました。また、複合体形成阻害能を有する抽出物をがん細胞(悪性黒色腫、肺がん、膵がんの細胞)に作用させることでそれらのがん細胞にアポトーシスを誘導することを見出しました。これらの成分の中に、新たな抗腫瘍活性物質が含まれていると期待しています。
https://www.kait.jp/research/navi/iida.html
http://iida.biokait.jp/iida/welcome.html

●膜ろ過法を利用したナノマテリアルの分離精製技術の開発
膜分離工学研究室 教授 市村重俊

均一なナノサイズの物質を高濃度で効率良く回収する分離精製操作は一般に煩雑なものとなります。膜ろ過法は、これを容易に連続的に行えるため期待されていますが、物質の吸着や堆積により性能が低下するファウリング現象への対策が不可欠です。そこで当研究室では、ナノマテリアルと膜との相互作用を膜の表面修飾により制御することで、高い耐ファウリング性を持つろ過膜を開発しています。また、膜の性能を最大限発揮するためには堆積抑制技術も必要となるため、分散凝集挙動も含めた現象の解明、ろ過条件の最適化手法についてもあわせて検討しています。
https://www.kait.jp/research/navi/ichimura.html
http://ichi.biokait.jp/ichi/Welcome.html

●線虫C. elegansおよび哺乳動物培養細胞を用いた健康寿命延長に寄与する生理活性物質の探索と同定および機能解析
老化・疾患生物学研究室 教授 井上英樹

植物や食材に含まれる生物由来の生理活性物質が生物の健康状態の向上に寄与することが知られています。当研究室では遺伝子および細胞内機構がヒトと共通している線虫C. elegans(ガンを匂いで探索すると話題になった生物です)および、哺乳動物培養細胞を用いて健康に寄与する生理活性物質を探索、単離・同定し、その作用機序の解明を進めています。最近は特に、皮膚の老化を抑えたり傷の修復を促進したりする作用を持つ生理活性物質や、がんの転移や悪性化を抑えることが期待される生理活性物質の作用機序の解明に焦点を合わせ研究を進めており、健康長寿を実現するための基礎となる知見確立を目指しています。
https://www.kait.jp/research/navi/hinoue.html
http://inoue.biokait.jp/index.html

●組織培養による薬用植物の大量増殖技術の開発
植物細胞工学研究室 教授 岩本 嗣

漢方薬に対する関心の高まりとともに、漢方薬の市場規模は拡大傾向にありますが、日本での生産量は少なく、海外からの輸入に依存しているため、安定供給に対する懸念が大きいです。また、類似品や有効成分含量が少ない粗悪品の混入が問題となっているため、成分含量の揃った漢方薬の安定供給が急務となっています。そこで、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の依頼を受け、漢方薬の材料となる薬用植物の無菌培養系の確立と組織培養による大量増殖技術の開発に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/research/navi/iwamoto.html

●タンパク質から見た食品の研究
水産化学研究室 准教授 小澤秀夫

食物アレルゲンの原因物質は、食品中に含まれるタンパク質です。特定原材料に指定されているエビのアレルゲン除去法を開発しました。分子動力学シミュレーションは、蛋白質構造データバンクに登録されているタンパク質およびそれらの近縁タンパク質を対象にタンパク質のふるまいを計算機により再現する手法です。
現在は、魚肉の赤色を担うミオグロビンを対象とし、その変色機構の分子機構を検討しています。 
https://www.kait.jp/research/navi/ozawa.html
http://ozawa.biokait.jp/

●腸の粘膜防御能に及ぼす食物繊維の影響
免疫化学研究室 教授 栗原 誠

食物繊維は、腸粘膜に物理的な刺激を与えて腸の運動を促す他、腸内細菌のエサとして腸内細菌叢(腸内フローラ)の維持に寄与していますが、腸内細菌のエサになる食物繊維は一様ではないため、食物繊維の種類によって腸内フローラのタイプが異なる場合があります。一方、食物繊維の宿主腸粘膜に与える影響については、粘膜防御能を高める作用等が示唆されているものの、「食物繊維の種類や腸内フローラのタイプによってその作用は異なるのか?」など、不明な点が多くあります。本研究では、腸粘膜防御の最前線で働く粘液物質に着目し、食物繊維が粘液物質の「質」や「量」に及ぼす影響を、独自に開発したモノクローナル抗体を用いて検討しています。
https://www.kait.jp/research/navi/kurihara.html

●酵素の反応機構を利用したタンパク質性カプセルの開発
分子機能科学研究室 教授 小池あゆみ

生物がもつシャペロニンというタンパク質を、ナノサイズのカプセルとして医療分野や工学分野に応用する研究をしています。私たちは、直径2~5nmの人工的な金属粒子を95%の効率でシャペロニンの2つの空洞に順番に閉じ込めることに成功しました。凝集性の高い金属ナノ粒子や化合物が水溶液中で安定に分散し、また、数nmの近い距離に配置することが可能となりました。金属ナノ粒子はがん治療や人工光合成などへの応用が可能であることから、医療や持続可能なエネルギー源の開発が期待できます。また、この技術は金属ナノ粒子だけでなく薬物(化合物)の内包にも適用できることから、ドラッグデリバリーシステムにも応用できます。
https://www.kait.jp/research/navi/koike.html
http://koike.biokait.jp/koike/Welcome.html

●海産無脊椎動物の生殖や発生の研究
繁殖生態学研究室 准教授 柴田大輔

生物は一般に配偶子である卵と精子を用いて有性生殖を行いますが、配偶子を伴わない無性生殖も存在し、生物は子孫を残すために様々な生殖戦略を持っています。配偶子形成や受精がどのように起こり、それによって生じた胚が複雑な形態や機能を持つ成体にどのように成長していくのかを調べることで、生物の発生への理解を深めることに繋がります。海産無脊椎動物は地球上の海洋生物の種数の70%以上を占めると言われており、さらに多様性にも富んでいます。本研究室では、海産無脊椎動物の発生や生殖様式に着目し、生殖戦略に関する研究を行っています。
https://www.kait.jp/research/navi/shibata.html

●高分子界面科学の技術を利用したナノカプセルの開発
食品高分子化学研究室 教授 清水秀信

食品・医薬品・化粧品などの分野に、生理活性や抗酸化性などの機能を有する分子を活用していくためには、実際に使用される環境下において、これらの分子が機能発現できるためのカプセル化技術が必要とされています。われわれの研究グループでは、ナノサイズの高分子微粒子内にこれらの機能性分子を分子分散させる技術を構築しました。現在までのところ、タンパク質や水に溶けにくい機能性成分などを20wt%以上の高濃度でカプセル化できる手法として、ミニエマルション法やin situ重合法が有効であることを見出しています。これらの手法はいずれも、溶解または分散しているカプセル化分子存在下で重合を行うことにより、簡便にナノカプセルが得られることが特徴です。
https://www.kait.jp/research/navi/shimizu.html
http://shimizu.biokait.jp/

●非可食性バイオマス資源からのイソプレンの生産
微生物工学研究室 教授 仲亀誠司

非可食性バイオマス資源とは、光合成により炭素固定ができる食べられない動植物のことであり、例えば、木材や草が該当します。非可食性バイオマス資源は、化石燃料と比べて、CO2排出量が少ない輸送用燃料や化成品原料の製造(バイオリファイナリー)のプロセスの構築が可能であるため、CO2排出量の削減を目的とした非可食性バイオマスからの有用物質の生産が広く研究されています。当研究室では非可食性バイオマスから合成ゴムの原料であるイソプレンの製造を目的として、非可食性バイオマスの分解能の高い担子菌(キノコ)にイソプレン合成遺伝子を導入した形質転換体の作製とその利用を行っています。
【技術シーズ】 https://cp.kanagawa-it.ac.jp/files/25e6aa4dae2556506241c8f307b3e53e.pdf
https://www.kait.jp/research/navi/nakagame.html

●ピペリジン骨格を有する化合物の合成研究と生物活性物質の探索を目指したピペリジンライブラリーの構築
天然有機化合物研究室 教授 野田 毅

ピペリジン環は、医薬品の中で最も多く見いだされるヘテロ環の1つです。この構造をもつ化合物は生物活性を持つ天然物に見いだされるだけでなく、医薬品へと展開できる可能性が高くその合成研究は盛んです。しかし、2位に置換基を持つ3-アミノピペリジン誘導体の合成例は少ないのが現状です。本研究では、3-アミノピペリジンを部分構造として有する光学活性2-置換-3-アミノピペリジンの合成法を開発し、この合成法を利用してピペリジン化合物ライブラリーを構築するとともに、これらのライブラリーの中から医薬品の候補化合物やその中間体、生命現象の解明に役立つ新規化合物の探索に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/research/navi/noda.html

●新しく作られた蛍光タンパク質の最適化
時空間細胞生物学研究室 教授 村田 隆

下村脩博士のノーベル賞に象徴されるように、緑色蛍光タンパク質(GFP)を用いた細胞標識技術は現代の生物学の重要技術の一つであり、現在でも波長、明るさ、光安定性などの改良が続いています。しかし、改良された蛍光タンパク質を実際の研究に使うためには、蛍光タンパク質遺伝子を標識したいタンパク質の遺伝子につなぎ、生きている細胞に導入して評価し、接続の最適化を行わなくてはなりません。我々は細胞分裂に必須なチューブリン遺伝子や、細胞の増殖に必要な他の遺伝子を用いて最適化を行っています。蛍光タンパク質とチューブリン等の間をつなぐリンカー配列の最適化の結果、染色体、動原体、紡錘体などを多重標識して長時間3Dライブイメージングすることに成功しています。
https://www.kait.jp/research/navi/murata.html
https://sites.google.com/view/kait-muratalab/

●軸索輸送による神経細胞の恒常性制御とその神経変性疾患への関与
神経生物学研究室 准教授 山下直也

私たちが物事を感じ、考え、覚えたりできるのは、脳の中に850億個もの神経細胞がいるからです。神経細胞の殆どは生まれる前に作られ、一度作られた神経細胞は再生できません。従って、生涯にわたり神経細胞を正常に維持し続けることは、健康寿命の延伸に繋がります。当研究室では、軸索輸送と呼ばれる脳内の宅配システムに着目し、軸索輸送が正確に働くことで健康な神経細胞が維持される機構と、宅配システムの異常が神経疾患発症と関連することについて研究しています。既にアルツハイマー病(AD)関連分子の軸索輸送において新しい知見を見出し、これを基にしたADの診断、予防、治療に向けた応用研究にも取り組んでいます。
【技術シーズ】 https://cp.kanagawa-it.ac.jp/files/8402ba0a63dd9fcff8e3564e9919d27e.pdf
https://www.kait.jp/research/navi/yamashita.html

●酵素法による食品中に含まれるヒスタミンの高感度測定法の研究
酵素工学研究室 准教授 山村 晃

ヒスタミンは主に魚介類の腐敗が生じる過程で生成され、その摂取によりアレルギー性食中毒を引き起こすことがあります。このため食品中のヒスタミン濃度の測定は品質管理上重要とされ、ヨーロッパなど海外ではヒスタミンの基準値が設定されています。本研究室では、ヒスタミンオキシターゼを産生する菌を土壌から発見し、その酵素遺伝子の増幅及び大腸菌に形質転換した高発現系の構築に成功しており、現在、熱的に安定で長期保存が可能なヒスタミンオキシターゼの産生に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/research/navi/yamamura.html

●抗菌性高分子ゲル材料に関する研究
環境高分子化学研究室 准教授 和田理征

水溶性の高分子であるポリビニルアルコール(PVA)は、高含水性、透明性、生体適合性に優れているため、食品分野や医療分野、化粧品分野で注目されています。また、PVAは水に容易に溶けるために成型加工性に優れ、さらには、物理架橋型ゲルおよび化学架橋型ゲルを形成することが知られています。
キトサンは、生体適合性や生分解性を有し、さらには、毒性がなく、安全性の高い天然多糖高分子です。また、分子鎖にアミノ基を有することから、抗菌性を示すことが知られています。生体適合性に優れたPVAとキトサンを組み合わせる方法を検討することにより、菌やカビなどの温床といわれるウェットな状態で増殖を抑えられるゲル材料が出来ると考えられます。本研究では、抗菌性を有するゲルフィルムの開発とその特性に関する研究に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/research/navi/wada.html
http://wada.biokait.jp/

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