産学官連携メールマガジン(2022年12月12日号 研究・技術シーズ紹介 特集:看護学科)
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【神奈川工科大学】産学官連携メールマガジン(2022年12月12日号)
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(●:新規、◎:更新、○:再掲)
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【1】研究・技術シーズ紹介(特集:看護学科)
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看護・医学・工学・理学の融合による女性の健康問題の“見える化”に挑戦
●基礎看護教育課程におけるキャリア教育に関する研究
基礎看護学領域 特任教授 鈴木久美子
キャリア教育とは、子ども・若者がキャリアを形成していくために必要な能力や態度の育成を目標とする教育的働きかけです。そして、キャリアの形成にとって重要なのは、自らの力で生き方を選択していくことができるよう必要な能力や態度を身につけることです。
看護専門職は、看護基礎教育で学んだ専門性が就職に直接結びつくため、学生時代から卒業後のイメージが抱きやすい特徴があります。そのため、キャリア教育として決められた教育プログラムはなく、それぞれの教育機関で独自に行われているのが現状です。看護基礎教育において、全学年を通して組織的かつ継続的にキャリア教育を実施するために、どのような教育プログラムやキャリア支援が必要であるかを検討していきたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/suzuki_k.html
○看護管理者が考える新人看護職員研修を担う教育担当者に必要な能力
基礎看護学領域 准教授 猪又克子
2010年4月厚生労働省は、新人看護師の離職率の低減を目指して新人看護職員研修制度とともに研修ガイドラインの中で教育担当者の新たな設置を提案しました。これまで、いくつかの都道府県において、研修制度、教育体制に関する研修会を実施してきましたが、特に中小規模病院においては、教育担当者の役割遂行が十分に行われていない状況を実感しています。いくつかの研究報告においても、ガイドラインの活用や教育担当者の役割遂行が十分でないことが示されています。本研究では、看護管理者が考
える教育担当者に必要な能力を明らかにし、基礎教育および継続教育において培うべき教育力を検討することを目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/inomata.html
○乳がん体験者の語りに焦点を当てた研究
基礎看護学領域 講師 水谷郷美
乳がんの治療は手術療法やホルモン療法・化学療法など年々進歩してきていますが、国内の乳がん患者の年次推移は罹患率・死亡率共に増加している状況です。乳がんの再発は手術後2、3年以内が多いですが10年以上経過して出現することもあります。したがって乳がん患者は、乳がんを発症してから長期に再発・転移の可能性と向き合いながら生活を余儀なくされ、心理的苦痛が大きいと考えられます。そのため、がんと共に生きることの身体的・心理的苦痛の様相の実際を知り、援助のヒントを得るため、乳がん体験者の語りについて質的研究に加え、テキストマイニングを用いた量的研究を行っています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/mizutani.html
○看護職者の離職予防を目指して
-ワーク・エンゲイジメントに着目して-
老年看護学領域 教授 金子直美
日本では看護職の離職率が非常に高く、看護師不足が続いている状況にあります。離職を予防する取り組みとして知識を教授する研修などが行われていますが、効果はあまり見られていません。その原因として、ネガティブな部分を補うためのプログラムが多いことが考えられます。そのため、「ワーク・エンゲイジメント」に着目した職務継続を促すプログラムの開発を目指しています。ワーク・エンゲイジメントとは、「仕事に関するポジティブで充実した状態」と定義されており、1990年代より職場における組織および個人の活性を促すことが期待されて使われはじめた言葉です。このポジティブな部分に着目し、各々の持つ力を発揮できるよう関わることで、離職予防の実現を目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/kaneko.html
○Mass gathering医療に関する研究
成人看護学領域 講師 奈良唯唯子
Mass Gathering医療は海外では救急医学の1分野として確立し、論文発表も多く定性的システマティックレビューを始め、メタ解析の報告も散見されます。本邦では災害医療の1部分としてとらえられていることが多く、論文発表は少なく、Mass Gathering医療として、定性的システマティックレビューのみでメタ解析が行なわれていないため、十分な議論がなされないのが現状です。Mass Gatheringはイベント中に過剰な医療供給を必要とした場合、開催地の地域医療システムに多くの負担を強いるため、地域の医療破綻や救急対応の欠如から一次的な医療崩壊になる可能性があり、イベントごとに異なる背景に対応した対策を行い、イベントの開催における危機管理をする必要があります。 本研究は、Mass Gathering医療が確立できない要因として、様々なイベントタイプ、イベント特性、危険因子などが挙げられ、報告を困難にしていることが考えらます。そのため、危機管理の体制と今後のMass Gathering医療の充実を図るために必要な統一した報告様式について検討します。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/nara.html
●重症度、医療・看護必要度(看護必要度)に関する研究
―急性期の患者を適正に評価するためにー
成人看護学領域 講師 久松桂子
我が国は団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据え、現在の医療提供体制と将来推測される医療需要のバランスを調整する医療政策に取り組んでいます。7対1看護体制の病床を9万床削減することを目標にし、看護必要度はその算定要件であることから診療報酬改定ごとに変更されています。患者を正確に評価する必要がありますが、様々な立場から急性期にある患者像をより反映するための課題が議論され続けています。特に患者の状態をあらわすB評価項目は、評価者である看護師の意見が反映される必要があると考えております。看護師が急性期の患者をどう捉えているかを調査し、その結果を基に改良された評価表作成を目指し研究に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/hisamatsu.html
●老年看護学に熟練した看護教員の指導による看護学生と高齢者の世代間交流を通したケア意識育成のプロセス
老年看護学領域 講師 高野真由美
Erikson EHは世代性を「次世代へ教え導くことへの関心」と定義し、壮年期以降の心理的社会的発達課題としています。すなわち高齢者が若者を手助けし世話をしようとする利他的行動は発達課題であり、それは世代間相互作用により若者の成長に繋がると考えられます。一方、ケアとは世話し世話される相互作用によるものです。そこで本研究では、臨地実習において看護教員が、どのように世代性を踏まえながら高齢者と若い看護学生の世代間交流を支援し、看護学生のケア意識を育成しているのか、その構造を明らかにし、教育プログラムの開発を考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/takano.html
〇認知症高齢者のストレングスに着目する研究
老年看護学領域 助教 佐口清美
認知症により知的機能が衰退した人の行動は、今なお周囲からは問題として扱われることが多い。この問題に対して、さらなる当事者主体のパラダイムシフトを目指し、認知症高齢者のストレングスに着目した研究を行っています。具体的には、認知症当事者の語りを活用したストレングスの解明、認知症高齢者と関わる支援者側のストレングスの認知とストレングスを活かした行動の解明です。認知症高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるために、ストレングスの実践的活用の検討を進めています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/saguchi.html
〇母子歯科保健予防対策の標準化に関する研究
母性看護学領域 特任教授 前山直美
高齢化・長寿社会に対応した生涯にわたる歯科保健対策の必要性が指摘されています。母子歯科保健は,母体の健康とともに次代を担う子供たちの健康づくりの基盤となる最初の重要なステップです。母体の口腔保健の向上は、本人だけでなく生まれてくる子供や家族に対しても影響が大きく大変重要です。研究者は母子歯科保健を推進するシステムや教育、組織的体制など関連要因を発展させる目的で母子歯科保健予防対策の実態と動機づけに影響する要因を明らかにしました。現在は母子歯科保健予防対策の標準化に向けた取り組みと母子歯科保健を推進する効果的な連携システムの構築などの研究を進めています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/maeyama.html
〇 ―ダイバーシティの中で性差を越えた相互理解の実現―
母性看護学領域 講師 青木真希子
人々が個人の特徴を認め合い、協力していく社会、その実現には、性差も認め合い互いに尊重していく必要があります。私は、女性の健康を主な研究テーマとし、認め合う社会には本人だけでなく、お互いが共通の指標に基づいて女性の健康問題を理解しあうことが重要だと考えています。しかし、女性の健康問題は大部分が解明されていません。そのため、看護のみならず生体医工学,脳・神経科学,生理学などの知見を用いて、女性の健康問題の特徴の“見える化”を進めています。今後は“見える化”された情報からAIを用いて女性の健康問題を表現する共通の指標を構築し、基礎から社会実装まで切れ間ないトランスレーショナル研究を目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/aoki.html
〇先天性無痛無汗症患児のセルフケア確立と家族への支援の研究
小児看護学領域 教授 浜辺 富美子
先天性無痛無汗症という生まれつき汗をかけない、痛みを感じることができない稀少難病の患児と家族に20年以上かかわらせていただきながら、支援やセルフケアの研究をしています。本疾患の患者さんは、成長・発達にともない様々な二次合併症が出現します。発汗できないことから体温の調節が難しく、皮膚のバリア機能の低下があります。痛みを感じないことから潜んでいる病気の発見が遅れる、度重なる骨折などから運動器の障害も出てきます。生命・生活の質(Quality of Life)を向上するためには、身体を守るセルフケアの確立が必要ですが、知的障害もあることから困難なことが多く、ご家族の方と試行錯誤しながら成功例を分析して、患者会を通して発信しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/hamabe.html
〇精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入
小児看護学領域 講師 欠ノ下郁子
現代における社会の変化に伴い、子ども達の精神疾患や精神的課題が増加しています。これらの課題は、社会で解決すべきことと医療で解決すべきことが含まれているため、早期に発見し多職種で支援を行うことが必要となります。精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入は、精神疾患の慢性化や重症化を防ぐのみならず、二次障害を予防し、子ども達が望む生活の実現に貢献します。 しかし、精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入には課題が多くあります。そのため、子ども達を取り巻く大人が連携して精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入が実現できるよう、医療のみならず、学校、家庭、社会全体の課題を明らかにする研究を行っています。今後は明らかになった課題から、学校と医療の連携を中心とした早期介入システムの構築に貢献できる研究を行いたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/kakenoshita.html
〇精神科病棟における病棟文化の醸成と精神障害者のリカバリーに関する研究
精神看護学領域 教授 柴田真紀
現在、日本では地域精神保健福祉施策を整え、長期入院患者の解消に努めていますが、いまだ解消には至っていません。日本の精神科医療の課題である長期入院の解消には、退院に向けた意欲の喚起、本人の意向に沿った移行支援の方策が必要ですが、それを実践するには、リカバリーの概念をスタッフおよび病院全体で認識し、組織として機能することが求められます。そして、その中心にいる当事者のリカバリーを進め、その体験を明らかにして、今後につなげていく必要があります。本研究は、精神科の長期入院患者を対象とする病棟において、スタッフ教育を行うとともに患者を対象にエンパワメントを主体としたリカバリー支援を実施する実践研究であり、精神科医療の質の向上に寄与していきたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/shibata.html
○地域生活を継続する依存症患者へのアプローチ方法に関する研究
精神看護学領域 講師 田代 誠
精神科病院から退院した依存症にある当事者は、依存対象となるものに惑わされないよう、様々なサポートを受けて地域で生活しています。しかし、新たなストレスとの出会い、日常生活への負担孤独などによって再発再燃し、入院してしまうことも予測されます。そこで、退院した依存症にある当事者が、自己のセルフケア能力を高めるためには、どのようなサポートがあればよいか、地域生活を継続できるかに焦点おいた研究を心がけています。外来、訪問看護、デイケア、行政、グループホーム、自助グループなど、医療と福祉によるアプローチ方法について検討し、その人らしさを取り戻し満足いく生活ができる支援方法のシステムを導きだしたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/tashiro_m.html
〇社会保障制度に関する研究
地域・在宅看護学領域 教授 西田幸典
超高齢社会を迎えたわが国では、「治療は病院で」、「治療後の療養は自宅で」という流れに変わってきています。しかし、自宅での療養には多様なニーズがあり、それに応えるためには多様な社会保障サービスが必要になってきます。私は、この社会保障サービスの充実に向けた政策研究を行っています。また、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を活かして、在宅療養における様々な社会保障サービスに関する情報の提供活動(講演・勉強会)も行っています。さらに、医療的ケアに関する介護職・看護職向けの社会保障制度に関する研究 研修にも携わっています。この他、看護学と法学の知識を活かして、病院前救護体制のあり方に関する研究や講演活動も行っています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/nishida.html
○在宅療養者のヒヤリハットと有害事象に関する研究
地域・在宅看護学領域 講師 泉山由美子
在宅療養における看護は、地域に暮らす人々が生活を継続できるよう、安全なケアを提供する役割があります。しかし、訪問看護は、単独で訪問し、訪問時間の制約や次回訪問までの間隔が空く等の特徴があり、これらの特徴を捉えたリスクマネジメントとセーフティマネジメントが重要です。そのため、研究者は、訪問看護師の医療的ケアと療養上の世話のプロセスにおいて、訪問看護記録から在宅療養者のヒヤリハットと有害事象を把握するための研究を行っています。現在は、訪問看護記録スクリーニング基準を作成し、その妥当性の検証を行い、地域における安全性の高いケア提供システムの構築に向けて研究を進めています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/izumiyama.html
〇公衆衛生に関する研究
公衆衛生看護学領域 教授 入江慎治
日本国憲法25条に謳われた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現するために、社会保障制度があります。社会保障制度の4本の柱として、1)社会保険、2)公的扶助(生活保護)、3)公衆衛生、4)社会福祉があります。この公衆衛生において我が国で重要な役割を担っているのが、保健師です。保健師は、地域社会で暮らす住民が病気や障害になる前から予防に関わる重要な役割を担っています。保健師を中心とした公衆衛生活動をよりよくするためにはどのようなことが必要であるかを研究しています。また、諸外国における公衆衛生の取り組みについても研究しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/irie.html
〇父親のボンディングとは?
公衆衛生看護学領域 助教 鈴木大地
ボンディングとは、親から自分の子への愛情や慈しみといった情緒的な絆のことを言います。この親が子に抱く情緒的な絆が欠如した状態のことをボンディング障害と言い、産後うつと同様に、周産期メンタルヘルスの重要な課題の1つであると言われています。このボンディングに関する研究は、母親を対象として多く実施されていますが、父親を対象とした研究は限られており、また父親(または両親)を対象とした研究でも、父親独自の尺度を用いて実施されている研究はほとんどありません。そのため、父親のボンディングの概念の解明や、父親のボンディング測定尺度の開発など、父親のボンディングに焦点を当てた調査・研究に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/suzuki.html
〇看護職のリーダシップ行動評価尺度日本語版作成・評価
看護管理学領域 特任教授 新実絹代
昨今の保健・医療・福祉においチーム医療が推進されており、看護職には多職種連携におけるキーパーソンの役割が期待されています。その役割を担うスキルとしてリーダシップ力は必須といえます。看護職のリーダシップを評価する実効性の高い尺度は少ない現状があります。そこで、米国版の「The Student Leadership Practice Inventory, Observer Instrument, 2nd Edition」(以下、SLPI)を用いて、看護職のリーダシップ行動測定尺度の日本語版を作成し、信頼性と妥当性を検証し公表しました。現在、本学の4年次生と看護生涯学習センター「ファーストレベル研修」の受講者を対象に、実習や研修前後のリーダシップ行動評価を実施し分析に取り組み一部公表しています。センター事業による看護管理者育成や外部の看護管理教育機関の講義も多く担当しております。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/niimi.html
〇看護師と看護補助者の看護チームにおける協働に関する研究
看護管理学領域 助教 辻田幸子
少子高齢社会を背景に地域包括ケアシステムが進められ、看護職は病院だけでなく、生活の場でも必要とされています。様々な場面での看護職の需要があるなか、看護提供を効率的かつ効果的に行うことが課題となります。看護業務は幅広く、専門的知識を必要とするものとそうでないものが混在しています。病院では、看護の補助的業務を行う看護補助者と看護職が看護チームとして看護提供を行っています。しかし、看護補助者を含む看護チームにおいて、人間関係や協働に関する課題があり、チームとして機能していない現状もあります。それら課題の解決のため、看護チームが機能するための要素やチームマネジメントについての研究に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/tsujita.html
【神奈川工科大学】産学官連携メールマガジン(2022年12月12日号)
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(●:新規、◎:更新、○:再掲)
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【1】研究・技術シーズ紹介(特集:看護学科)
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看護・医学・工学・理学の融合による女性の健康問題の“見える化”に挑戦
●基礎看護教育課程におけるキャリア教育に関する研究
基礎看護学領域 特任教授 鈴木久美子
キャリア教育とは、子ども・若者がキャリアを形成していくために必要な能力や態度の育成を目標とする教育的働きかけです。そして、キャリアの形成にとって重要なのは、自らの力で生き方を選択していくことができるよう必要な能力や態度を身につけることです。
看護専門職は、看護基礎教育で学んだ専門性が就職に直接結びつくため、学生時代から卒業後のイメージが抱きやすい特徴があります。そのため、キャリア教育として決められた教育プログラムはなく、それぞれの教育機関で独自に行われているのが現状です。看護基礎教育において、全学年を通して組織的かつ継続的にキャリア教育を実施するために、どのような教育プログラムやキャリア支援が必要であるかを検討していきたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/suzuki_k.html
○看護管理者が考える新人看護職員研修を担う教育担当者に必要な能力
基礎看護学領域 准教授 猪又克子
2010年4月厚生労働省は、新人看護師の離職率の低減を目指して新人看護職員研修制度とともに研修ガイドラインの中で教育担当者の新たな設置を提案しました。これまで、いくつかの都道府県において、研修制度、教育体制に関する研修会を実施してきましたが、特に中小規模病院においては、教育担当者の役割遂行が十分に行われていない状況を実感しています。いくつかの研究報告においても、ガイドラインの活用や教育担当者の役割遂行が十分でないことが示されています。本研究では、看護管理者が考
える教育担当者に必要な能力を明らかにし、基礎教育および継続教育において培うべき教育力を検討することを目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/inomata.html
○乳がん体験者の語りに焦点を当てた研究
基礎看護学領域 講師 水谷郷美
乳がんの治療は手術療法やホルモン療法・化学療法など年々進歩してきていますが、国内の乳がん患者の年次推移は罹患率・死亡率共に増加している状況です。乳がんの再発は手術後2、3年以内が多いですが10年以上経過して出現することもあります。したがって乳がん患者は、乳がんを発症してから長期に再発・転移の可能性と向き合いながら生活を余儀なくされ、心理的苦痛が大きいと考えられます。そのため、がんと共に生きることの身体的・心理的苦痛の様相の実際を知り、援助のヒントを得るため、乳がん体験者の語りについて質的研究に加え、テキストマイニングを用いた量的研究を行っています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/mizutani.html
○看護職者の離職予防を目指して
-ワーク・エンゲイジメントに着目して-
老年看護学領域 教授 金子直美
日本では看護職の離職率が非常に高く、看護師不足が続いている状況にあります。離職を予防する取り組みとして知識を教授する研修などが行われていますが、効果はあまり見られていません。その原因として、ネガティブな部分を補うためのプログラムが多いことが考えられます。そのため、「ワーク・エンゲイジメント」に着目した職務継続を促すプログラムの開発を目指しています。ワーク・エンゲイジメントとは、「仕事に関するポジティブで充実した状態」と定義されており、1990年代より職場における組織および個人の活性を促すことが期待されて使われはじめた言葉です。このポジティブな部分に着目し、各々の持つ力を発揮できるよう関わることで、離職予防の実現を目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/kaneko.html
○Mass gathering医療に関する研究
成人看護学領域 講師 奈良唯唯子
Mass Gathering医療は海外では救急医学の1分野として確立し、論文発表も多く定性的システマティックレビューを始め、メタ解析の報告も散見されます。本邦では災害医療の1部分としてとらえられていることが多く、論文発表は少なく、Mass Gathering医療として、定性的システマティックレビューのみでメタ解析が行なわれていないため、十分な議論がなされないのが現状です。Mass Gatheringはイベント中に過剰な医療供給を必要とした場合、開催地の地域医療システムに多くの負担を強いるため、地域の医療破綻や救急対応の欠如から一次的な医療崩壊になる可能性があり、イベントごとに異なる背景に対応した対策を行い、イベントの開催における危機管理をする必要があります。 本研究は、Mass Gathering医療が確立できない要因として、様々なイベントタイプ、イベント特性、危険因子などが挙げられ、報告を困難にしていることが考えらます。そのため、危機管理の体制と今後のMass Gathering医療の充実を図るために必要な統一した報告様式について検討します。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/nara.html
●重症度、医療・看護必要度(看護必要度)に関する研究
―急性期の患者を適正に評価するためにー
成人看護学領域 講師 久松桂子
我が国は団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据え、現在の医療提供体制と将来推測される医療需要のバランスを調整する医療政策に取り組んでいます。7対1看護体制の病床を9万床削減することを目標にし、看護必要度はその算定要件であることから診療報酬改定ごとに変更されています。患者を正確に評価する必要がありますが、様々な立場から急性期にある患者像をより反映するための課題が議論され続けています。特に患者の状態をあらわすB評価項目は、評価者である看護師の意見が反映される必要があると考えております。看護師が急性期の患者をどう捉えているかを調査し、その結果を基に改良された評価表作成を目指し研究に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/hisamatsu.html
●老年看護学に熟練した看護教員の指導による看護学生と高齢者の世代間交流を通したケア意識育成のプロセス
老年看護学領域 講師 高野真由美
Erikson EHは世代性を「次世代へ教え導くことへの関心」と定義し、壮年期以降の心理的社会的発達課題としています。すなわち高齢者が若者を手助けし世話をしようとする利他的行動は発達課題であり、それは世代間相互作用により若者の成長に繋がると考えられます。一方、ケアとは世話し世話される相互作用によるものです。そこで本研究では、臨地実習において看護教員が、どのように世代性を踏まえながら高齢者と若い看護学生の世代間交流を支援し、看護学生のケア意識を育成しているのか、その構造を明らかにし、教育プログラムの開発を考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/takano.html
〇認知症高齢者のストレングスに着目する研究
老年看護学領域 助教 佐口清美
認知症により知的機能が衰退した人の行動は、今なお周囲からは問題として扱われることが多い。この問題に対して、さらなる当事者主体のパラダイムシフトを目指し、認知症高齢者のストレングスに着目した研究を行っています。具体的には、認知症当事者の語りを活用したストレングスの解明、認知症高齢者と関わる支援者側のストレングスの認知とストレングスを活かした行動の解明です。認知症高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるために、ストレングスの実践的活用の検討を進めています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/saguchi.html
〇母子歯科保健予防対策の標準化に関する研究
母性看護学領域 特任教授 前山直美
高齢化・長寿社会に対応した生涯にわたる歯科保健対策の必要性が指摘されています。母子歯科保健は,母体の健康とともに次代を担う子供たちの健康づくりの基盤となる最初の重要なステップです。母体の口腔保健の向上は、本人だけでなく生まれてくる子供や家族に対しても影響が大きく大変重要です。研究者は母子歯科保健を推進するシステムや教育、組織的体制など関連要因を発展させる目的で母子歯科保健予防対策の実態と動機づけに影響する要因を明らかにしました。現在は母子歯科保健予防対策の標準化に向けた取り組みと母子歯科保健を推進する効果的な連携システムの構築などの研究を進めています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/maeyama.html
〇 ―ダイバーシティの中で性差を越えた相互理解の実現―
母性看護学領域 講師 青木真希子
人々が個人の特徴を認め合い、協力していく社会、その実現には、性差も認め合い互いに尊重していく必要があります。私は、女性の健康を主な研究テーマとし、認め合う社会には本人だけでなく、お互いが共通の指標に基づいて女性の健康問題を理解しあうことが重要だと考えています。しかし、女性の健康問題は大部分が解明されていません。そのため、看護のみならず生体医工学,脳・神経科学,生理学などの知見を用いて、女性の健康問題の特徴の“見える化”を進めています。今後は“見える化”された情報からAIを用いて女性の健康問題を表現する共通の指標を構築し、基礎から社会実装まで切れ間ないトランスレーショナル研究を目指しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/aoki.html
〇先天性無痛無汗症患児のセルフケア確立と家族への支援の研究
小児看護学領域 教授 浜辺 富美子
先天性無痛無汗症という生まれつき汗をかけない、痛みを感じることができない稀少難病の患児と家族に20年以上かかわらせていただきながら、支援やセルフケアの研究をしています。本疾患の患者さんは、成長・発達にともない様々な二次合併症が出現します。発汗できないことから体温の調節が難しく、皮膚のバリア機能の低下があります。痛みを感じないことから潜んでいる病気の発見が遅れる、度重なる骨折などから運動器の障害も出てきます。生命・生活の質(Quality of Life)を向上するためには、身体を守るセルフケアの確立が必要ですが、知的障害もあることから困難なことが多く、ご家族の方と試行錯誤しながら成功例を分析して、患者会を通して発信しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/hamabe.html
〇精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入
小児看護学領域 講師 欠ノ下郁子
現代における社会の変化に伴い、子ども達の精神疾患や精神的課題が増加しています。これらの課題は、社会で解決すべきことと医療で解決すべきことが含まれているため、早期に発見し多職種で支援を行うことが必要となります。精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入は、精神疾患の慢性化や重症化を防ぐのみならず、二次障害を予防し、子ども達が望む生活の実現に貢献します。 しかし、精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入には課題が多くあります。そのため、子ども達を取り巻く大人が連携して精神疾患や精神的課題のある子どもへの早期介入が実現できるよう、医療のみならず、学校、家庭、社会全体の課題を明らかにする研究を行っています。今後は明らかになった課題から、学校と医療の連携を中心とした早期介入システムの構築に貢献できる研究を行いたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/kakenoshita.html
〇精神科病棟における病棟文化の醸成と精神障害者のリカバリーに関する研究
精神看護学領域 教授 柴田真紀
現在、日本では地域精神保健福祉施策を整え、長期入院患者の解消に努めていますが、いまだ解消には至っていません。日本の精神科医療の課題である長期入院の解消には、退院に向けた意欲の喚起、本人の意向に沿った移行支援の方策が必要ですが、それを実践するには、リカバリーの概念をスタッフおよび病院全体で認識し、組織として機能することが求められます。そして、その中心にいる当事者のリカバリーを進め、その体験を明らかにして、今後につなげていく必要があります。本研究は、精神科の長期入院患者を対象とする病棟において、スタッフ教育を行うとともに患者を対象にエンパワメントを主体としたリカバリー支援を実施する実践研究であり、精神科医療の質の向上に寄与していきたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/shibata.html
○地域生活を継続する依存症患者へのアプローチ方法に関する研究
精神看護学領域 講師 田代 誠
精神科病院から退院した依存症にある当事者は、依存対象となるものに惑わされないよう、様々なサポートを受けて地域で生活しています。しかし、新たなストレスとの出会い、日常生活への負担孤独などによって再発再燃し、入院してしまうことも予測されます。そこで、退院した依存症にある当事者が、自己のセルフケア能力を高めるためには、どのようなサポートがあればよいか、地域生活を継続できるかに焦点おいた研究を心がけています。外来、訪問看護、デイケア、行政、グループホーム、自助グループなど、医療と福祉によるアプローチ方法について検討し、その人らしさを取り戻し満足いく生活ができる支援方法のシステムを導きだしたいと考えています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/nurse/nursing/academic/tashiro_m.html
〇社会保障制度に関する研究
地域・在宅看護学領域 教授 西田幸典
超高齢社会を迎えたわが国では、「治療は病院で」、「治療後の療養は自宅で」という流れに変わってきています。しかし、自宅での療養には多様なニーズがあり、それに応えるためには多様な社会保障サービスが必要になってきます。私は、この社会保障サービスの充実に向けた政策研究を行っています。また、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を活かして、在宅療養における様々な社会保障サービスに関する情報の提供活動(講演・勉強会)も行っています。さらに、医療的ケアに関する介護職・看護職向けの社会保障制度に関する研究 研修にも携わっています。この他、看護学と法学の知識を活かして、病院前救護体制のあり方に関する研究や講演活動も行っています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/nishida.html
○在宅療養者のヒヤリハットと有害事象に関する研究
地域・在宅看護学領域 講師 泉山由美子
在宅療養における看護は、地域に暮らす人々が生活を継続できるよう、安全なケアを提供する役割があります。しかし、訪問看護は、単独で訪問し、訪問時間の制約や次回訪問までの間隔が空く等の特徴があり、これらの特徴を捉えたリスクマネジメントとセーフティマネジメントが重要です。そのため、研究者は、訪問看護師の医療的ケアと療養上の世話のプロセスにおいて、訪問看護記録から在宅療養者のヒヤリハットと有害事象を把握するための研究を行っています。現在は、訪問看護記録スクリーニング基準を作成し、その妥当性の検証を行い、地域における安全性の高いケア提供システムの構築に向けて研究を進めています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/izumiyama.html
〇公衆衛生に関する研究
公衆衛生看護学領域 教授 入江慎治
日本国憲法25条に謳われた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現するために、社会保障制度があります。社会保障制度の4本の柱として、1)社会保険、2)公的扶助(生活保護)、3)公衆衛生、4)社会福祉があります。この公衆衛生において我が国で重要な役割を担っているのが、保健師です。保健師は、地域社会で暮らす住民が病気や障害になる前から予防に関わる重要な役割を担っています。保健師を中心とした公衆衛生活動をよりよくするためにはどのようなことが必要であるかを研究しています。また、諸外国における公衆衛生の取り組みについても研究しています。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/irie.html
〇父親のボンディングとは?
公衆衛生看護学領域 助教 鈴木大地
ボンディングとは、親から自分の子への愛情や慈しみといった情緒的な絆のことを言います。この親が子に抱く情緒的な絆が欠如した状態のことをボンディング障害と言い、産後うつと同様に、周産期メンタルヘルスの重要な課題の1つであると言われています。このボンディングに関する研究は、母親を対象として多く実施されていますが、父親を対象とした研究は限られており、また父親(または両親)を対象とした研究でも、父親独自の尺度を用いて実施されている研究はほとんどありません。そのため、父親のボンディングの概念の解明や、父親のボンディング測定尺度の開発など、父親のボンディングに焦点を当てた調査・研究に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/suzuki.html
〇看護職のリーダシップ行動評価尺度日本語版作成・評価
看護管理学領域 特任教授 新実絹代
昨今の保健・医療・福祉においチーム医療が推進されており、看護職には多職種連携におけるキーパーソンの役割が期待されています。その役割を担うスキルとしてリーダシップ力は必須といえます。看護職のリーダシップを評価する実効性の高い尺度は少ない現状があります。そこで、米国版の「The Student Leadership Practice Inventory, Observer Instrument, 2nd Edition」(以下、SLPI)を用いて、看護職のリーダシップ行動測定尺度の日本語版を作成し、信頼性と妥当性を検証し公表しました。現在、本学の4年次生と看護生涯学習センター「ファーストレベル研修」の受講者を対象に、実習や研修前後のリーダシップ行動評価を実施し分析に取り組み一部公表しています。センター事業による看護管理者育成や外部の看護管理教育機関の講義も多く担当しております。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/niimi.html
〇看護師と看護補助者の看護チームにおける協働に関する研究
看護管理学領域 助教 辻田幸子
少子高齢社会を背景に地域包括ケアシステムが進められ、看護職は病院だけでなく、生活の場でも必要とされています。様々な場面での看護職の需要があるなか、看護提供を効率的かつ効果的に行うことが課題となります。看護業務は幅広く、専門的知識を必要とするものとそうでないものが混在しています。病院では、看護の補助的業務を行う看護補助者と看護職が看護チームとして看護提供を行っています。しかし、看護補助者を含む看護チームにおいて、人間関係や協働に関する課題があり、チームとして機能していない現状もあります。それら課題の解決のため、看護チームが機能するための要素やチームマネジメントについての研究に取り組んでいます。
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/health/nursing/academic/tsujita.html