神奈川工科大学に100GbpsのSINET6と直結したローカル5G基地局を開設、学外エッジ装置と連携した低遅延映像処理実験が可能に

2024年9月11日、情報ネットワーク・コミュニケーション学科 丸山充教授(超広帯域ネットワーク研究センター所長・先端工学研究センター 丸山特別研究室)が中心となり、神奈川工科大学(所在地:厚木市) 先進技術研究所の2Fにローカル5G基地局を開設しました

基地局と研究室メンバー

待望のローカル5G基地局を開設

 2024年9月11日、神奈川工科大学 先進技術研究所の2Fにローカル5G基地局が開設されました。これは情報ネットワーク・コミュニケーション学科 丸山充教授(超広帯域ネットワーク研究センター所長・先端工学研究センター 丸山特別研究室)が中心となり取り組んだものです。ローカル5Gとは、皆さんが日頃お使いの5G携帯の基地局を通信事業者ではなく、自社敷地内に構築するネットワークで、端末のSIMカードを入れ替えることで利用できます。情報ネットワーク・コミュニケーション学科 丸山研究室・瀬林研究室では、これまで大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所国立情報学研究所(NII、東京千代田区)が提供するSINET6を用いて、様々な8K超高精細映像のリアルタイム編集・配信実験への協力等の活動をおこなってきました。今回は、NIIの「先端モバイル駆動研究センター」に加入が認められたことで、各大学と新しいローカル5Gの使い方を模索するプロジェクトの一つに参加、今回の基地局の設置に繋がりました。

 

中庭に向けて設置されている基地局

 今回設置されたのは株式会社FLARE SYSTEMSが本学向けにカスタマイズしたローカル5G基地局です。トランク型になっており、可搬性を持たせることで、災害時などの利用や山奥の建設現場などでもインターネットに接続できるような活用方法が期待されています。この基地局の設置のために7月に総務省に免許申請し、2024年8月26日に実験試験局の免許状(識別信号:『かながわこうかだいがくローカル5Gじっけんきち1』)が交付されました。

無線局免許状

この基地局は国家資格を持った無線従事者しか運用できないため、丸山教授は第一級陸上特殊無線技士の資格を取得。また、N科の1年生から4年生までの学生が6名、第二級陸上特殊無線技士の国家資格を取得しました。

 

本学のネットワーク環境

 本学は、SINET6に100Gbpsの高速な通信速度で接続されています。家庭用でお使いの光回線は1Gbps程度が利用されていますが、この100倍の高速な通信速度です。今回のローカル5GネットワークをSINET6に直結する事で、大学内の可搬型8K高精細カメラで撮影した映像を低遅延で、SINET6の相模原データセンター内の400Gbpsの回線速度で接続されたエッジ装置の映像処理ノードに送出して、クラウドからの映像素材と組み合わせて映像加工を行い、各地に配信するような生番組制作のワークフローの実験をする予定です。

 今後大容量、低遅延の5G回線を利用して本学内の学科学部の垣根を超えた共同実験の創出が期待されます。丸山教授も「興味がある本学の先生方にはぜひ参加していただきたい。高校生の皆さんも、このようなネットワーク環境を利用した実践的な学びや研究に興味がある方はぜひ入学を検討していただきたい。」と話していました。

※本実験の一部は2024年度国立情報学研究所公募型共同研究(24S0105)の助成を受けています。

学生へのインタビュー

今回のために国家資格を取得した一人、情報ネットワーク・コミュニケーション学科 4年 石川雅隆さんに話を伺いました。

第二級陸上特殊無線技士の資格を取得した石川さん

―国家資格取得・今後の展開について

 第二級陸上特殊無線技士の国家資格自体は難しくなく、参考書を読み、過去問をひたすら解いて試験に臨みました。基地局の免許状と個人の免許証が届き、これから実際に運用していきます。今後はこのローカル5Gがどれくらいの範囲で使えるのか等の実験を行います。卒論もローカル5Gを使った実験を予定しています。

―ネットワークに興味を持ったきっかけは?

 高校生の時に進路をどうしようか悩み、友人と将来について話したときに、AIが発達してきてもプログラムや情報分野は伸びるだろうという話をしていました。具体的な目的のためにプログラム系に進もう、というわけではなく、オープンキャンパスで情報ネットワーク・コミュニケーション学科を知って、ここなら色々なことができそうだと思って進学を決めました。

―研究室ではどのように過ごしていますか

 丸山研究室では、プロジェクトが始まるときに毎回リーダーが決まります。そのリーダーが中心となって、学生が主体的・自発的に動く環境があります。全国各地の大学との共同研究・実験、さっぽろ雪まつりでの8K映像のリアルタイム伝送実験や、3日間で12万名が来場した最先端インターネットテクノロジーの専門イベント『Interop Tokyo2024』の大学ブースでの出展・会場内デモ設備の構築など、毎年多くのプロジェクトがあり大変忙しいですが、楽しくもあります。丸山先生も、「今の学生の身分を有効活用して、失敗を恐れずたくさん挑戦をしてほしい」と言ってくれているので、挑戦しやすい環境があります。「ネットワーク」というと漠然としてどんな分野か分かりづらいのですが、その分内容も多岐にわたります。研究室にいるメンバーも、それぞれ得意分野を持っていて自分より詳しいので、なにか疑問が湧いたときに質問すると、それぞれの得意分野からどんどん話が広がり、興味の幅が広がるのも、とても面白いと思っています。

基地局を調整中

 その知識を生かし、本学のeスポーツサークルの配信チームでもリーダーとして活躍した石川さん。本学では2024年4月にeスポーツに特化した施設を持つ地域交流型施設KAIT TOWNが新設されました。1Fのホールで競技の様子を大きなスクリーンへ映し出したり、eスポーツの競技大会が行われる様子を動画サイトへ配信できる設備がありますが、できることが多い分、設備は複雑です。みんなが利用できるよう、配線図などを描いて部員に説明したり、小中高生向けのe競技スポーツのイベントで実況席・競技者席の配線を整備したりと、研究室での経験が活きているそうです。

 

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▼本件に関する問い合わせ先

研究推進機構 広報担当
E-mail:ken-koho@mlst.kanagawa-it.ac.jp